2023/10/14
以下をアップしました。
結婚式のスピーチに限らず、「感動的な言葉」を探してネットをさまよう人というのは、往々にして“感受性のアンテナ”があまり高くないことが多いように思います。いや、正確に言えば、感動を他人に委ねている時点で、その人の感受性は受け身になってしまっている、ということです。
本来、感動というのは“自分の中にあるもの”です。たとえば、心が動いた経験、忘れられない風景、大切な人との関係――それらの記憶や思いに、じっくり向き合うことで自然と出てくる言葉があるはずです。そして、そういう言葉こそが人の心を打つ力を持っています。
一方で、「感動する例文」で検索する人の多くは、そのプロセスをすっ飛ばして、答えだけを手に入れようとしているのです。例えるなら、料理を食べたいけど作るのは面倒だから、冷凍食品をチンして済ませようとしているようなもの。もちろん便利ですし、時にはそれでいいこともあります。でも、本当においしい料理は、自分の手で素材を選び、時間をかけて丁寧に作ったものですよね。感動の言葉もそれと同じです。
そもそも、アンテナが高い人――つまり感受性が豊かで、自分の思いや経験に敏感な人というのは、結婚式のスピーチを頼まれた時点で、すでに「何を話そうかな」「あのエピソードを入れたいな」と、自然とアイデアが浮かんでいるものです。たとえ最初は漠然としていても、頭の中にはいくつかのヒントがあって、それを形にするための言葉を探すというプロセスに入っている。
逆に、何も思い浮かばない、自分の中から言葉が出てこない、だから「感動する例文」を探そう――という状態は、つまり“自分が何を感じているか”を感じ取る力が弱まっているということです。そして、そのことに気づかないまま「感動」というものを外部から調達しようとするから、どこかでズレが生まれてしまう。
大切なのは、上手な言葉を借りることではありません。自分の中の気持ちや経験に正直になることです。たとえ拙くても、自分の言葉で語った方が、はるかに心に響きます。なぜなら、聞き手は言葉の“上手さ”ではなく、“本気さ”を受け取るからです。
感動するスピーチを目指すなら、まずは「自分が何に感動するのか」に向き合ってみてください。外に正解を探すよりも、自分の中にある小さな記憶や感情のかけらを拾い上げる方が、ずっと価値のあることだと思います。アンテナの高さは、探す姿勢ではなく、“感じる力”によって決まるのです。